Poesy In My Pocket #6 宮崎信恵
2024.06.21土曜の昼前、息子と図書館に行った。借りていた本を返し、七夕の短冊に願い事を書くことができる机が設置されていたので二人で書いた。息子は読み解くことのできない何かを書き殴り、私は世界中の人が平和な日常を過ごせますように、と祈るような気持ちで書き、たくさんの短冊と一緒に笹に結んだ。さぁ本を借りようか、と思ったら、息子は遊んでからにする、と言う。図書館は大きな公園内にあり、少し歩くと遊具のある子供の広場もある。広場へ向かって歩いていると、息子が黄色い葉っぱが落ちてる、と言う。見ると、道の端に大きな黄色い葉が一枚だけ落ちていた。すぐそばの生垣のように植えられているツツジの葉の緑と、その下に落ちて溜まっている枯れた葉との色の対比が綺麗で、自分達だけの宝物を見つけたみたいで嬉しくなった。一枚だけどこからやって来たのだろう。
日曜の昼、道を歩いていたら急に息子が電車になって、ガッチャン、しゅうてーんと言いながら走り始めた。そして、走っている途中で落ちていた何かに気を取られて転んだ。よく見ると、それはぺしゃんこになった雀の雛だった。見上げると電柱があり、そこに作られた巣から落ちてしまったらしい。小さな押し花みたいな雛の姿に心が痛んだ。
火曜の朝、家の床の座布団に誰かのティーシャツがふわっと置かれていた。よく見ると、すだちくんと小さな魚のぬいぐるみが座布団とティーシャツの間で眠っていた。突然現れた小さな寝床が可笑しくて笑った。
水曜の夕方、息子が窓の外の空を見て、煙が出てる、と言う。火事かと思って私も見てみると、まだ青い空に飛行機雲が一直線に伸びていた。あれは飛行機が通った後にできる雲で、飛行機雲と言うのだと教えてあげると、すぐに息子は嬉しそうな顔になった。そして、帽子を被り、おもちゃにしているカメラを持ち出してベランダに出たがった。それで、私もカメラを持って一緒に出ることにした。息子は飛行機雲にカメラを向けてファインダーを覗き、私はその様子を撮った。息子の嬉しそうな顔を見て私が思い出したのは、娘が小さい頃に計量カップいっぱいに注いだ水が縁から盛り上がるのを見た時の目の輝きだった。娘が表面張力を知った日だ。この時、私ももっと新しいことを知りたい、と思ったのをよく覚えている。
水曜の夜、ご飯を食べていたら、外がすごく明るい、と娘が言う。そして、夏至はいつだっけという話になり、今度の金曜だと思い出し、道理で明るいわけだ、と二人で納得した。食卓に並ぶおかずも蛸、大葉、茄子、ズッキーニなど、夏らしいものが増えてきた。本格的な夏を前にようやく梅雨が始まろうとしている。