Poesy In My Pocket #9 宮崎信恵
2024.09.30結構長い間「絵」を描くこと避けていた。仕事でイラストを描いていたから、展示などで製作する作品は手を動かして何か作りたい気持ちの方が強かったからだ。布を剥合わせて作るパッチワーク、紙を貼り合わせてを作るパッチワーク、刺繍、アルミの葉っぱ、紙の葉っぱ、木版画、編み物、服など。
1月にPACIFICA COLLECTIVESの貴島さんと御器所のコンパルで展示の打ち合わせをした。10月の個展では「絵が見たい」と言われた。展示の話の前にも絵のオーダーを受けていたのだが、ずっと取り組めずにいた。絵を描こうと思っても、何を描こう、何に描こう、何で描こう、と悩んだ。
あれやこれやと試しに描いているうちに、ほとんど作品はできずに6月になった。息子が幼稚園に行っている時間と寝た後だけが制作できる時間だったから、この調子ではまずいと思った。
去年の夏に自発的に作ることをやめてしまったので、まずは自分が今まで何を作ってきたか、何を考えていたのかを思い出したかった。生活しながら自然に制作していた感覚を少しでも取り戻したいと思った。それは、今までなかなか進まなかった作業だった。自分が子育てに必死になっている間に大切ものを失ったみたいで悲しくなった。モヤモヤと考えていると、そもそも自分は何も持っていなかったのでは、とすら思えた。
ひとまず、昔書いた文章やメモを少しずつ読み直したり、スケッチブックを見返してみた。それから、自分が以前に作った刺繍やパッチワークなどの布作品を絵で描くことから始めた。過去の作品を描くことで何か思い出すことがあるかもしれない、と思ったのだ。それでも、初めのうちは描けなくて何度も描き直した。作品をなぞっているうちに、少し自分の感覚を思い出せた気がした。苦しかったのが、徐々に楽しくなった。そうして、今の自分の作品にしていった。
自分は何を考えて制作していたのだろう。それは、難しい意図はほとんどなくて、ただ好きなものを面白がって作っていたのだと思う。作るのが楽しい、ということが自分の手を動かし続けていた。そういうことをまた思い出した。
今もまだ思い出している途中だ。後ろを向いているみたいだけど、前に進んでいる実感がある。ポケットの中にはくしゃくしゃになったままの紙切れがまだまだある。