POESY IN MY POCKET

Poesy In My Pocket #3 宮崎信恵

2024.05.07

新生活が始まり、ドタバタと毎日が過ぎていく。

入園したばかりの息子は幼稚園生活をとても楽しんでいるようだ。本人曰く、寂しいのを我慢しているらしいのだが。息子は人見知りもなく平気そうだったけど、初めの頃は私の方が緊張していて、迎えの時間を間違えたり、保護者会に遅刻したりと勝手に一人で混乱していた。でも、近頃は毎日顔を合わせる子どもたちや保護者のお母さんやお父さんたちとも打ち解けてきたように思う。「また明日!」と言い合って別れて、翌日「おはよう」と当たり前のように会える人たちがいるというのが久しぶりで何だか嬉しい。

そして、夫が平日にも休みがあるので、送り迎えを任せたり、時々一緒に迎えに行ったりするのも楽しい。上の娘の頃は私一人で全部やっていたので、そういうことがとても新鮮に感じる。子どもの成長を一緒に身近に感じられる人がいるというのはこんなにも心強いのか、と思う。

入園して二週目、休み明けに登園していつものように靴を履き替え、帽子とカバンを片付けるのを見届けて息子と別れた。いつもはすぐに室内の車のおもちゃで遊び始めるのだが、この日はまた外に出てきていた。それで、外で遊びたいんだなと気付いて、また靴を履き替え、外遊び用の帽子を被らせると運動場に駆けていった。私は自転車を押して門を出て、フェンス越しに運動場を眺めながら走り始めた。そして、ちょうどすぐ近くの遊具で遊ぼうとしていた息子を見つけたので名前を呼んでみた。すると、息子は不思議そうな顔でじっとこちらを見つめて、しばらく止まっていた。離れていく私。何もなかったみたいに動き出す息子。それを見た瞬間になぜか胸がぎゅっとなって目に涙が溢れてきた。今までどこに行くにも一緒で、自分の一部みたいだった息子が、自分の意志でひとりで行動している。これから私の知らないところでどんどん自分の世界を広げていくんだ、と思うと無性に寂しさを感じた。

入園する前に「幼稚園に行くようになると寂しくなるね」と何度か言われたことがあった。夫は寂しがっていたけど、私はやっと少し解放される、という気持ちの方が大きかった。今まで自由に動けなくて煩わしさを感じることもあった自分だったのだが、今になってやっと今まで一緒にいられた時間がどれだけ幸福な時間だったのか、ということに気付かされた。自分は馬鹿だなぁと思ったけど、それにちゃんと気が付くことができて良かった。

そのことを夫に話すと「ママとの別れだね」と言っていた。春は別れの季節。そして出会いの季節。息子のこれからの日々に幸あれ!と強く強く願う。