POESY IN MY POCKET

Poesy In My Pocket #5 宮崎信恵

2024.06.03

昔の写真を見返していたら、今では色褪せてしまったジーンズがすごく濃い青色をしていて、この色が好きだったなぁと思い出した。

それは雨の日に自分の足元に散らばる娘の青い三足のスニーカーを写した写真で、写真の中の私は青いジーンズと黒い長靴を履いて、もうほとんど水を弾かなくなったmont-bellのウィンドブレーカーを着ていた。写真は雨の匂いを思い出させ、まだ少し肌寒い気温と、雨に濡れた土や草や葉が目に浮かんだ。外の何もかもが濡れていて、着ている服が濡れることなんて何でもない気がした。自然に囲まれて暮らし、外に出てそれを目の前に感じると、自分のことがちっぽけに思えて、ちょっとした悩みや怒りは大したことではないような気がしてくるから不思議だ。それでもよくひとりでくよくよ悩んでいたのだが。

最近は雨の日が多かった。雨の日は車で息子を幼稚園まで送迎する。息子はまだ傘を差し慣れておらず、途中で傘を閉じて差すのを諦めてしまう。そうなるとずぶ濡れになるので、レインコートを着せる。そして、長靴を履いていると水溜りに飛び込みたくなるらしく、朝は必死に止めている自分がいる。

先日の雨の日、幼稚園から帰ろうとしていると、向こうからKちゃんとお母さんがやってきた。「一緒に帰りたいみたい」とお母さんが言う。Kちゃんは息子と帰るのが楽しいらしく(息子も同じく)、度々誘ってくれるのだ。とは言っても帰る方向が違うから、一緒に歩けるのはせいぜい二十メートルくらいなのだが。Kちゃんは「かさをささずにあるくとたのしいよ」と息子を誘い、二人で雨に濡れながら楽しそうに歩いていく。Kちゃんはレインコートを着ていなかったけど、そんなことは気にせずニコニコしていて、こちらまで笑顔が伝染する。あっという間に別れの地点に到着してしまい、「また明日ね」と手を振って別れた。その後、息子は水溜りから水溜りへと飛び込んでコインパーキングへと辿り着く。車に着く頃には長靴の中までびしょ濡れだ。雨に濡れることは楽しいことなんだと子ども達から教わる。

晴れた今日、新しく買ったズボンを穿いて、息子と自転車で幼稚園へ向かう。古着の黄色いズボンで、穿く前に酸素系漂白剤に漬けてから洗濯したけど、まだ前の持ち主の柔軟剤の匂いがする。この匂いもいつかは薄れて、私のズボンになっていく。洗い立てで気持ち良く、カラッと晴れた今朝の気候によく合っていた。今日は暑くなりそうだ。