Poesy In My Pocket #7 宮崎信恵
2024.07.02
自転車で信号待ちをしていたら、道に緑色をしたイチョウの葉が落ちていた。イチョウといえば秋の黄色い葉の印象が強く、緑のイチョウのことはあまり気にかけたことがなかった。
街中のその辺に植っているようなものでも、秋の黄色いイチョウの木は美しい。どこからその色を手に入れたのだろうかと思うほど見事に黄色く染まり、その黄色い街並みを見ると心が躍る。家の近辺にはイチョウ並木があり、黄色い葉が道に落ちていたり、風に吹かれて路面を走っていくような光景を見るのが好きなのだが、葉がわんさか溜まって最高だな、と思っている頃に必ず全ての木を切られてしまう。落ち葉が溜まって何かと支障が出るのだろうと推測できるが、情緒がなくて残念に思う。
夏の通り沿いの緑のイチョウの木を見ながら走る。秋に切られた木々は葉をたくさん茂らせ、黄緑色をした若葉が混じって、秋の姿とはまた違い綺麗である。私たちが新生活だなんだと大混乱している間に、木は静かに予定通りに変化していて、夏には夏の顔で街の景色の一部になっている、という当たり前のことを再認識する。夏の木々は勢いがあり、誰かの家の庭に生えているのを見ているだけでも元気が出る。
今朝は雨上がりで、梅雨らしく湿気た重たい空気が体にまとわりついた。昨日の雨でノウゼンカズラの花がいくつも落ちていて、ラッパみたいなオレンジ色の花が道端をささやかに彩っている。バラの花びら、名前のわからない白い小花も同じように路上に儚い美しさを散らしていた。
植物に焦点を合わせて走ると、実に色んな種類の花や木や草があるのだな、と改めて驚く。家の前に置かれた植木鉢からも住人の性格を何となく窺い知ることができて面白い。そんなことを考えながら公園の横を走っていたら、今年一番の蝉の鳴き声が聞こえて木々を見上げた。こうしてすべてがまた一巡りしていくのだ。楽しみなような、途方もないような、はっきりしない気持ちが浮かんで消えた。今日の曇り空みたいだと思った。